「あって安心? あるから不安?」
(東京新聞記者 半田 滋さん講演記録 2007/6/23)「入間 基地」より
本格的にミサイル防衛システムを導入するような形になるとは、当時の防衛庁の幹部ですら考えてはいませんでした。
多額のお金がかかり、技術的にも武器としては信頼性に乏しいものを購入するとは、全く考えていなかったのです。
--尻尾を振ってエサまで用意--
それがなぜこのような形できまったのか。 02年12月、当時の石破防衛庁長官が訪米します。 ちょうどアメリカでは、
ミサイル防衛システムを完成したので実戦配備すると宣言したときに重なりました。 この絶妙に見えるタイミングは、
発表では偶然とされています。 石破長官はその場に居合わせ、すっかり舞い上がってしまって、「(90年代の終わり
からのミサイル防衛の)日米共同研究を加速する」と、突然言ってしまいました。
それに対して日本では、当時の福田官房長官が「そんなことはしません」と、ただちに全面的に否定しました。
福田さんの否定にもかかわらず、03年5月、ワシントンで行われた日米首脳会談の中で、小泉首相は「ミサイル
防衛を積極的に導入していく」と、これまた突然発言します。 防衛庁ではそれを受けて、8月の概算要求にミサイル
防衛システム導入のためのお金を盛り込みます。 そして、12月に政府予算原案の決定がありますが、その前の閣議で
正式に決定。 という手順で話しが進んでいきました。・・・・・・・
かっての保守本流と言われた人たちの時代には、戦争経験者がたくさんいましたから、武器につながるものや
自衛隊の海外派遣につながるものに対して慎重な人たちが多かった。 しかし、徐々にそういった記憶は薄らいで
いきますし、小泉首相はある意味で何のわだかまりもなく、常に切腹のための小刀を懐に抱くような政治家ですので
こだわりがない。 そこで一気に話しが進んでいきます。 ・・・・・・
--ノドン・テポドンとは/ 実証の無い迎撃機能 (一部改編)
テポドンの射程距離は2000kmくらいです。 北朝鮮と日本との間は1300kmくらいしかありませんから、
テポドンでは飛び越えてしまうのです。・・・ PAC3で想定しているのはもちろんノドンです。・・・ おそらくノドンは
日本に届くだろうということです。 北朝鮮から飛んでくるノドンの速度は、だいたいマッハ15です。 発射されて
から落ちてくるまで、7分から10分くらいしかありません。 撃ったと言われて慌ててPAC3を移動させても
間に合わないのです。 PAC3の射程は約15km〜20kmくらいで、守れる範囲を地面の距離に置き換えますと、
最大で50kmです。・・・・ マッハ10のものに対して、それに見合う速度で迎撃することは、論理の世界では可能
ですが、飛んでくるピストルの弾をピストルで撃ち落とすくらい、技術的に困難です。
PAC3はSM3同様、土台はレーセオン社が作り、弾はロッキード社が作っています。 アメリカの国防総省の中に
あるミサイル防衛庁やロッキード社が行っている実験で、想定される弾道ミサイルの速度に対して迎撃したという
ものは一例もありません。 マサチューセッツ工科大学のポストル教授が論文で出していますが、今までのいろいろ
な実験報道はあるものの、ノドンのように、1300kmくらいの距離を飛ばして、それを迎撃することは1度も
やっていないのです。
--分からないレーダー波の影響--
今、入間にあるPAC3のレーダーは、幅広く電波をばらまいていますので、電波障害や周辺住民の健康に影響が出る
ということは少ないでしょう。 レーダーの波を極端に狭くすると、遠くまで届くようになります。 飛んでくるミサイルを
早く見るために、遠目が効くようにするのです。 遠目が効くように絞ることによって、強いレーダー波がでることに
なりますが、やったことがありませんから、それによる影響は実は誰もかわりません。・・・・
ミッドコース段階で使うイージス艦はとてもいいレーダーをのせています。 そのレーダーの影響は大変大きく、
イージス艦が海にでたら、絶対に乗員を外に出しません。 レーダー波が隊員の体に影響を及ぼすことが証明
されているからです。 本当かどうか分かりませんが、乗員の子供はほとんどが女の子で、男が生まれないということ
です。 中にいて、守っているにもかかわらず、すでに影響がでているのです。 イージスかんの場合は海の外で
使うわけですからまだ影響は少ないと言えますが、PAC3の場合は、レーダー波を入間から出したり、
都内に行ってだすわけです。 どんな影響が出るかは恐ろしくて測れないし、見当もつきません。
--自衛隊にとってPAC3とは--
自衛隊にとって、(ミサイル防衛システム)に毎年2000億円を出すことでどのような影響がでるでしょうか。
自衛隊の予算は毎年、4兆8千億円くらいです。 多額のように見えますが、そのうちの4割は自衛官24万人の
人件費で、4割がツケ払いの経費です。高い武器は一度に買えず何年かの分割払いで購入していますので、その
支払いです。 残りの約9000億円で、毎年新たな武器を購入したり、訓練に必要な燃料を買ったりしています。 そこに
2000億円の出費が入ってきたということは、今まで買っていた燃料が買えなくなったり、修理に回していた戦車を修理に
出せなくなったりするわけです。 多くの人が、武器が古いと笑う北朝鮮の軍隊と、日本の自衛隊はよく似てきています。
災害が起きたときに、地元が対応しきれないところで活動することが自衛隊に一番期待されているところだと思います。
また、国際緊急救助隊としてスマトラ沖の地震に出向いたりすることは期待されていると思います。 しかし、お金が縛ら
れていき、動きが取れなくなっていきます。 ミサイル防衛によって、徐々に真綿で首を絞められるように、公共財
としての自衛隊の役割が小さくなり始めています。 潤っているのは、一部の防衛産業だけです。