北朝鮮の衛星打ち上げ VS 米韓合同軍事大演習
Satellite launch and joint military training
Wooksik Cheong
2009-03-12 16:59
Wooksik Cheong/2009-03-11
| 敵対関係を解消するには、相互信頼が欠かせないと言われる。言うまでもなく、信頼構築を促進するには、自己の 立場や考え方を相手に強要するよりはむしろ、相手側の立場を考えるよう努力することが重要だ。つまり、相手の 立場に立つというのは、相手の履いている靴を履いてみたらどういう気持ちになるかを知ろうとすることである。(* ) しかしながら朝鮮半島の現在の状況では、相手の靴を履いてみようとする意図の気配は微塵もない。自分たちの 主張だけが正当であり、相手側の言い分はただ、圧力がかかったときだけ考える。これは、北朝鮮の人工衛星 打ち上げ準備と、米韓合同軍事演習「キー・リザルブ」の問題をめぐる様々な舌戦において、米韓連合と北朝鮮の間 の攻撃/防衛の応酬に、はっきりと示されている。 米国、韓国、日本の3ヶ国の懸念や警告を無視して、北朝鮮は人工衛星打ち上げを強行する準備中である。北朝鮮 は「主権国家の正当な権利である人工衛星の打ち上げがなぜ問題になるのか?」と反論した。しかし、米・韓・日は、 その人工衛星とは、「顔」をかくす「マスク」であり、その顔とは実際は、長距離弾道ミサイルを試験発射しようとの北朝鮮 の意図である、と決めつけた。「赤ずきんちゃんに扮したオオカミ」というこの烙印が、3国の主張の根拠とされる。 予定される人工衛星の打ち上げは国連安保理決議違反であると言われて、追加制裁が示唆されている。MDシステムを 使って迎撃をするとも威嚇されている。 それゆえ、米国-韓国-日本の度を過ぎる対抗措置は、状況を複雑に、そして危険にする経過となり、北朝鮮による 実際の人工衛星の打ち上げ以上の大問題にしている。この過度な対抗プランは、北朝鮮の人工衛星「Kwangmyongson 2号」を「Taepodong テポドン2号」と呼ぶことからはじまっている。この危険だが見え透いたシナリオを見てみるならば、 事態が次のように進んだことが分かる。 北朝鮮の人工衛星打ち上げ(Kwangmyongson1) → 米国-韓国-日本による強い非難と、日本が進める、国連安保理での制裁論議 → 中国・ロシアの反対のために、国連安保理で採択された北朝鮮への制裁決議が流れる → 韓国と日本がそれぞれに北朝鮮への制裁を進める → 米国主導のMDシステム構築の加速化 → 北朝鮮の反発とヨンビョンでの核施設の無能化の中断 → 朝鮮半島での緊張の高まり 無論、米国、韓国、日本にとっての懸念は根拠のないことではない。北朝鮮のその種の科学技術は標準に達していない かもしれず、一方人工衛星の打ち上げ技術は弾道ミサイルへと転換し得る。衛星発射をこのように強行する理由には、 北朝鮮にその動機がある。 しかしこの懸念が、北朝鮮の人工衛星打ち上げが実際には弾道ミサイルであるというように結論づける根拠とはなり 得ない。これは、衛星打ち上げの技術が「軍事利用」に転化できるかもしれないという理由では、宇宙を平和利用する 権利を北朝鮮から奪うことはできない、という事実に基づく。 さらに、北朝鮮による人工衛星打ち上げの裏にある当初の理由は、衛星を所有することの意義だ。もし北朝鮮の人工 衛星打ち上げの目的が弾道ミサイルの開発のみにあるのなら、2000年の米国=北朝鮮のミサイル交渉で結ばれた、 「米国が北朝鮮のための衛星を打ち上げれば、北朝鮮は長距離弾道ミサイル開発を一時停止する」との両国合意は、 説明がつかないであろう。 さらに(*安全保障上)他国に依存しない要塞のような国家を作るという政策方針により、北朝鮮は最終的に、2012年 までには人工衛星を所有するという、国家の基幹計画を、今実行しているのである。 ミサイルではなく人工衛星であるときちんと言うことの重要性はこの点にあろう。国際社会が人工衛星の発射を「テポドン 2号」であると一方的に言うならば、それは国連の場かあるいはどこかの国により、非難や制裁、威圧的な軍事的対抗 措置が起こり、それにはミサイル防衛システムや軍事演習強化も含まれることになろう。しかし、このようなアプローチは 北朝鮮を挑発し、その結果、朝鮮半島と北東アジアの状況を不安定にするだけである。 反対に、この種の技術は弾道ミサイル開発に転換しうるという懸念が実際にあっても、打ち上げるのは人工衛星である と認めるならば、外交的な解決が可能となるかもしれない。2000年のミサイル交渉を思い出させるように、長距離弾道 ミサイル開発を一時停止にする代わりに、北朝鮮に代わって北朝鮮の人工衛星を米国が打ち上げるような解決策が 生み出されるかもしれないのだ。 北朝鮮も同じように、他国の立場に立つという姿勢が必要である。この人工衛星の打ち上げが、(*1967年国連宇宙 条約による)正当な権利であるとしても、朝鮮半島における緊張を高め、オバマ新政権にとって(*北に対する)態度 決定の幅を狭め、北東アジア地域での軍拡競争を加熱させる危険性があるならば、賢明に自制を働かせるよう求め られよう。さらに、北朝鮮が所有したいものが本当に人工衛星であるならば、北朝鮮にとってはまず、発射を強行する のを送らせて、ミサイル交渉の再開を提案するという展開にするのが望ましい。 米国と韓国の両方にとってもまた、「キー・リゾルブ」と呼ばれる米韓合同大演習に関して、北朝鮮の立場に立ってみる ことが重要である。米韓両国は、この演習は「北朝鮮に侵略するためのトレーニング」であるという北朝鮮主張を不当 なものとしてはねつけ、演習は「防御」行為であるとして、北側の演習中止要請を拒否している。 しかし、軍事的に敵対状態にあっては、原子力空母や最新兵器、数万人の軍隊を動員する大規模演習を一方が推し 進めることを、相手側に問題にしないよう期待することは理屈にならない。両者がそれぞれ相手側の物の見方ができる ならば、その不合理性を理解できないことはない。 たとえば「これは防御的であり、安心を得るため」という言い分で、中国と北朝鮮が大規模な軍事演習を行うとしたら、 韓国はそれを受け入れられるものだと考えるだろうか。そしてまた現在実際に、米国と韓国は、北朝鮮の金正日書記 長の健康問題を論じ、北朝鮮体制に突然の変化や予期せぬ事態発生の場合の軍事介入の可能性ということも、 はばからずに話しているではないか。 軍事対立の状態においては「適切な自制」が必要であるが、その自制も程度をこえれば、副作用を生じるだろう。(**) 北朝鮮が、在来兵器の軍拡競争と軍事力の点で遥かに遅れを取る国家でありながら、核兵器やミサイルを振り回し ているという事実こそ、その証明である。 李明博大統領とオバマ大統領のどちらも、北朝鮮の行いに目をつぶり、米韓合同軍事演習に対し金正日がどう感じる か、相手の立場に立って考える必要がある。今の問題の解決はまさにそこから始まる。 Wooksik Cheong:ピース・ネットワーク代表 (韓国) (*アメリカ・インディアン、スー族(たぶん)の諺といわれる。 in somebody's shoe (*朝鮮戦争以降の米朝関係で圧倒的な軍事力を構築した米国に比較して北朝鮮が自制的であったが、弾道ミサイル を発射する米国に次第に追い詰められ、現在の瀬戸際政策を採らざるを得ない、という意味に解釈できる。) |