無印良品のイスラエル進出をやめさせよう!
〜「血印悪品」になり果てるのか〜
杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)
無印良品(株式会社良品計画)は2011年中のイスラエルへの出店を決定したという。イスラエルのカイリグループという企業とライセンス契約を結び、商標のライセンス供与と商品供給を行うとのこと。
テルアビブかエルサレムに1店舗を出店予定だそうだ。良品計画自ら「日系小売企業の出店は初」とウェブサイトで半ば誇らしげに言及している。
なぜ今イスラエルに進出するのか? 時あたかもイスラエル・ボイコットが世界的高まりを見せているこの時に。
無印の説明はこうだ。「(イスラエルの)GDPは2008年秋以降の世界経済不況の影響下でもわずかながら成長しており、2010年は復調の兆しが見えることからも出店の価値は十分あると判断しました」。
要するに「儲かりそうだ」というわけだ。
長きにわたって国際法違反の占領を続け、ガザ虐殺や封鎖、人道支援船への襲撃など幾多の人権侵害を重ねる「ならず者国家」。 分離壁=「アパルトヘイト・ウォール」を築き、戦争犯罪の不処罰を継続する「無法国家」。
そんなイスラエルに、日本の小売店として歴史上初めて進出することに、無印はどのような意義を見出しているのだろう。悪しき「先駆者」として汚名を刻むのはやめた方が身のためだ。
パレスチナの平和を考える会やパレスチナ情報センターなどの呼びかけに応じて、既に多くの人々が無印に
出店中止を求める働きかけを行っている。しかし、それに対する無印の回答は悲しいものだ。
いわく、イスラエルでの取り組みは「単純な商品の供給」に過ぎない。「当社の願いは、紛争の原因となっている諸問題と離れ、世界中のできるだけ多くの生活者の方々に『無印良品』の商品を通じ、当社の考える『シンプルな暮らし方』をご提案し、ご満足をいただくことにございます」。
「単純な商品の供給」が大きな政治的メッセージ性を持つことに気づかないはずはないと思うのだが。
イスラエルにとっては有名な日本企業の初出店はこのうえない政治的支援に他ならない。それはイスラエルのあり方を容認するサイン(印)とみなされる。そして、無印に続く日本企業の進出の敷居はより低いものとなるだろう。
それにしても、「紛争の原因となっている諸問題と離れ」た形の商業行為というものは存在するのだろうか。
紛争の原因となっている無法行為に目を閉ざした「シンプルな暮らし方」の推奨はまっぴらご免だ。こうした
非論理を無印が本当に信じているのなら、「出直して来い!」と言う他ない。
5月下旬にヒューマンライツ・ナウの招聘により来日したラジ・スラーニ(パレスチナ人権センター)は「我々は
カフカの世界にいる」と述べた。保護される権利があるはずのガザ市民が、本来制裁の対象になるべきイスラエルから懲罰を受けている。
こうした転倒を許しているのは、米国や欧州などの政府の「黙認による共謀」であると。
日本政府もまた、共謀のコネクションに加わっている。人道支援船「ガザ自由船団」へのイスラエル軍による襲撃・虐殺を非難し、独立調査団派遣を求める国連人権理事会の決議に、棄権をするという恥ずべき選択を行ったのだ。
ちなみに、無印良品の企業としての行動理念には「誠実で、しかも正直であれ」「全てにコミュニケーションを」とある。
アパルトヘイト国家イスラエルに初進出し利益を上げることは、果たして「誠実」な行為だろうか。出店中止は、
結果的に無印の企業イメージを保全することになるだろう。そうした人々のありがたい意見をないがしろにすることは「コミュニケーション」拒否の行為である。
幸いにも無印良品は有名企業である。多くの消費者がその存在を認知しているがゆえに、その企業行動は、
広範囲に知れ渡る。そしてフランス・パリに8店舗が進出しているなど、ボイコット運動が強い地域にも出店している。
現在までのところ、無印は出店決定を見直す姿勢を一切見せてはいない。しかし、既に江川紹子さん(ジャーナリスト)などが無印のイスラエル進出への批判を口にし始めている。今後の取り組みの広がりしだいでは、出店中止という決定が下される可能性は十分に存在するのではないか。
私は1995年にフランスが南太平洋で核実験を相次いで強行した際、抗議行動の一環としての仏製品不買運動に加わったことがある。銀座の有名店前で飲料水「エビアン」を垂れ流すパフォーマンスを行ったりもした。当時、多くのマスメディアはフランスを強く批判し、私たちの抗議行動を好意的に報じた。
そんな行動を無印良品の本社や店舗でもやりたいとは思わない。どうか冷静に、企業としてのまっとうなリスク計算を実施して、イスラエルへの出店決定を撤回してもらいたいと思う。このまま出店を強行するならば、創意工夫をこらした無印良品ボイコット運動を国際的に展開せざるを得なくなるだろう。幸いボイコット運動は買わない運動であり、うれしいことに貧乏人でもできる活動なのだ。
無印は、傷ついた企業イメージを回復することは容易ではないと悟るべきだ。1980年に西友のプライベート・ブランド(PB)
商品として出発した無印は、89年に事業部が会社として異例の独立。以降、急成長を遂げてきた。80年当時に40品目に過ぎなかった品目数はいまや約7500点。良品計画は割安な専門店との競合を意識して、品目を5千点まで絞り込む方針を掲げたという。
同時に海外出店を加速させており、二千億円に迫ると見られる2011年度の売上高に海外(アジア)が占める割合は二割に達するという。今回のイスラエル進出決定はその一環である。
「企業の社会的責任(CSR)」が喧伝されて久しい。無印は企業としての倫理的挫折の道をこのまま突っ走るのだろうか。恥ずべきボイコット・リストにその名を連ねるのか。それは「血印悪品」への道である。
無印の選択の行方は、日本企業のCSRの本質を白日のもとにさらすだろう。無印の良心が試されている。そして、日本の消費者、市民の道義的水準もまた試されている。あなたの行動が試されている。
(出典:『インパクション』第175号)
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