■ 藤岡惇立命館大学教授 
   
『宇宙と核の覇権めざすアメリカ』 
     MDではなく「非核非ミサイル地帯の東北アジアを

    
                              (「核とミサイル防衛にNo!キャンペーン」パンフレットより抜粋 )

   ○「宇宙の軍事化」の4つの段階 
       
    第1段階: 兵器の中枢部でなく、周辺的なバーツの宇宙への配備により、戦局を有利に展開しようとした段階。
           軍事偵察衛星、核実験の探知衛星、軍事通信衛星、大気圏外への弾道ミサイル打ち上げなど
     

    第2段階: 冷戦後のラムズフェルドなど主導の「軍事革命」(RMA)、とくに精密誘導技術と情報通信技術の革命
           の現実化した段階。 2003年3月からのイラク戦争のすべての戦闘局面は、宇宙から統合的に指揮
           され、戦果が評価されただけでなく、使用された爆弾とミサイルの75%がGPS(全地球測位システム)
           衛星によって精密誘導された。 兵器システムの中枢をなす神経系統の宇宙配備。


    第3段階: 米国が推進する第2段階の軍事化に対して、宇宙ミサイルを有する国が地球表面から応戦しようとして
           生まれてくる段階。 反米勢力のミサイルに対して、これを途中で撃ち落とす目的で、地上からミサイル
           を発射する「ミサイル防衛」システムを含む。 この段階に入ると「宇宙の戦場化」の恐れが高まり、破壊
           された宇宙資産は、デブリ(細片)となって宇宙を浮遊したり、放射性物質が地上を汚染するというリスク
           が発生する可能性も高まる。


    第4段階: 宇宙資産を守るために兵器システムの心臓部たる実戦部分を宇宙に配備し、敵ミサイルの打ち上げを
           宇宙から攻撃し、破壊しようとする段階。「宇宙の全面的な兵器化」、「宇宙の全面的な戦場化」。 
           たとえば、X線レーザー衛星の宇宙配備。


         〜ミサイル防衛は、米国の宇宙覇権を敵のミサイルから防衛していくためのシステムとして開発され、
          配備されて行くのが必至〜

     
   ○米国の宇宙軍事戦略のなかにMDを位置づける
      
   ミサイル防衛というのは、「誰から」「何を」防衛するというのでしょうか。何をやるかよくわからない「不気味な北朝鮮
   のミサイル」から「日本の国民の命と暮らし」を守ってくれるものだというのが、日本国内で振りまかれている賛成論の
   主要な論拠のようです。
      

    「誰から」という場合、日本人はまずは北朝鮮からの「脅威」を考えますが、確認すべきことは、北朝鮮からの「脅威」
    はミサイル防衛で防げるようなしろものではないということです。「北」側の長年の要請にこたえて、米国が朝鮮戦争
    の終結を正式に(その場しのぎのリップサービスでなく)宣言し、先制攻撃で北の体制の転覆をはからないという
    「平和共存」の立場に米国および日本が立つことが、まず先決です。

    ラムズフェルドを先頭とする米国の宇宙ベースの軍産複合体が、米国の宇宙覇権に挑戦する可能性がある国として
    マークし、本格的なミサイル防衛網を構築して、宇宙進出を拒否しようと考えている国は、いまのところ中国だけです。
    中東・中央アジアの「イスラム原理主義」勢力を別とすると、中国の軍事力を封じ込めるとともに、中国を軸とした
    アセアン・プラス・スリー(アセアン諸国と中国、韓国、日本)が、対米自立の勢いを強め、EUのような独立した経済
    圏に発展することを阻止するというのが、米国支配層の最大の戦略課題なのです(共和党系と民主党系の間で、
    戦略の細部では対立がありますが)。

    次の問題は、「何」を防衛するのかという問題です。 日本人の多くは、日本国民の生命と財産、アメリカ人の多くは、
    アメリカ国民生命と財産を守ってくれるものだと思っているようですが、それは幻想です。米国の政策立案者たちが、
    防衛の第一の対象としているのは、まずは、宇宙に展開している米軍の宇宙資産であり、次に米軍の軍事基地
    (日本周辺の基地も一部は含むでしょうが)であり、軍事通信網なのです。その証拠に、青森県の津軽半島にある
    自衛隊の車力基地に米軍のXバンドレーダ施設が配備されようとしています(配備済み)。 なぜ津軽半島が選ばれ
    たのか。
    
東京圏を防衛するためではありません。 ハワイ・グアム、さらには米本土をねらう中国ないし北朝鮮のミサイルの
    打ち上げを早期に把握し、打ち上げ段階で迎撃するための絶好の位置に、車力基地があるからにほかなりません。
 
    
このような状況下で日本がMDに参加することは、宇宙の軍事化の第3段階から第4段階にエスカレートする宇宙
    軍拡の動きに、日本をまきこんでいくことになります。


   ○宇宙の軍事化の第5段階---宇宙の核戦争を招きかねない

    米国と同盟国が地上や空中、宇宙に構築するミサイル防衛シールドへの対抗策として、反米国が新タイプの核を
    開発、使用し、米国の宇宙戦争態勢を麻痺させようと試みる段階。核兵器や核エネルギーを用いた宇宙の戦場化。


   ○原発の巣である東北アジアで戦争をおこすと、「核の破局」に直結する

    今日、拉致問題などをめぐって日本の中に北朝鮮への反発が強まっていますが、戦争という手段で矛盾を解決する
    ことは、東北アジアでは、絶対の禁じ手にするべきです。なぜなら、日本海周辺の北朝鮮、韓国、日本には、世界の
    原子炉総数の4分の1にあたる70基もの原子炉が集中しているからです。 一基あたり平均出力は、100万キロ
    ワットで、チェルノブイリ級を上回っています。 
このような超大型の原発が70基も密集しているところでは、戦争は
    絶対にできません。核の破局を招くだけです。この事態をリアルに見るべきです。

                                                          
(2005年12月10日の講演より)